2011 12月9日(金)
続きです。
彼女たちは会社で働き始めました。
その後、その会社では障がい者を少しずつ採用するようになっていきましたが、社長には一つだけわからないことがありました。
どう考えても、会社で働くよりも、施設でゆっくりとのんびり過ごしたほうが幸せではないかと思えたのです。
そのことをあるお坊さんに聞くと、お坊さんはこう答えました。
「そんなことは当たり前でしょう。幸福とは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人に必要とされることなのです。特に役に立つことと、必要にされることは、働くことで得られるのです」 この言葉は、社長にとって目からウロコが落ちるような考え方でした。
「生きる」とはこういうことだとわかったのです。
それからは、さらに積極的に障がい者を採用するようになり、なんと社員の7割を障がい者が占めるようになりました。
この会社を訪ねたお客様の応接室に、コーヒーを持ってきたおばあさんがいました。
「よくいらっしゃいました。どうぞコーヒーをお飲みください」 その白髪で腰のまがったおばあさんは、50年前に入社したあの少女だったのです。
15歳くらいで採用していますから、もう65歳になっています。 彼女が会社に勤め始めて50年。
その彼女をあたたかく見守り、ともに働いてきた同僚たち。
最初の障がい者雇用について、「その子を一生面倒みられるだろうか」と悩んでいた社長の姿は、もうそこにはありません。信念を貫きとおして実行し続けている、自信にあふれた苦労人ならではのやさしい笑顔がありました・・・。
「日本で一番大切にしたい会社(坂本光司著)あさ出版」より引