2010 4月24日(土)
新社会人の方達は初任給を頂いた頃ではないでしょうか? そこで、良いお話を聞いたので、ご紹介いたします f^_^;
私の尊敬するA先生は「初月給は親のために使え」としつこく言われます。
先生は幼い頃、熊本で日用雑貨の行商をしていた両親のリヤカーに乗って育ちました。
貧しい生活でしたから、寒い日のお母さんは首にタオルを巻いていました。
お父さんの夢は、白いパンを腹いっぱい食べてみたいということでした。
そんな記憶が残っていたものですから、初月給をもらった先生は、お母さんにネッカチーフ、お父さんにはトースターをプレゼントしました。
お父さんは余程嬉しかったのでしょう。一枚一枚自分で焼く旧式のトースターをその後永年、大切に使われたそうです。
その先生の話を聞いた某信用金庫に勤める二十歳の短大卒の女性が、初月給を親のために使って喜んでもらおうと、両親をレストランに招待しました。
お母さんは前日から美容院にセットにいったりして大喜び。
ところが、お父さんはブスッと不機嫌な顔をしてついてきた。
「何を怒っているの」とたずねたら、「一回の晩飯ぐらいで、俺が二十年間苦労して育ててきたことが帳消しになると思ったら、大間違いだぞ」と言う。
「そんなこと、どうして言うの?」と思ったけど、口に出しません。
今日はめでたい日だし、お母さんは横でもうパクパク食べ始めているし、今さら怒って帰れない。
しばらく天井を見つめていたお父さんが、ポツリと「ビールぐらい、飲んでもいいか?」と言いました。
「誰がビールなんかついでやるもんか」、そう思ったけど、つがなきゃしょうがないなと思って彼女はお酌をした。
ところが、コップを差し出したお父さんの手には、二十年間勤めたセメント工場での白い粉が、びっしり。手の甲のしわと毛穴にまで詰まっていました。
それに気づいた彼女は「お父さんゴメンネ」と言いたかったけど、どうにも言葉になりませんでした。
自宅に戻ったその後、彼女がトイレに行こうとして両親の部屋の前を通りかかったら、中から話し声が聞こえる。
どうせまた、お父さんが私の悪口を言っていると思ったら、それが違うのです。
「俺も五十いくつになるけど、今日みたいにおいしい晩ご飯は初めてだった。あいつの顔を見ていたら、俺は涙があふれそうになったから、天井しか見れなかったけど、なあお前、本当にいい娘に育ったなあ」。
その瞬間、彼女はそこから先に足が進みませんでした。
そのまま自分の部屋に帰って、頭から布団をかぶって「バンザイ!」と叫んで、布団の中で朝まで泣き続けました。
この話しを、この女性は二十五歳の結婚披露宴のあいさつでしたそうです。
「先生の一言があったから、私は今、こうやって幸せになりました」。これが、私たちが今、置き忘れてきた”情”の世界なんです。点数にならない。そして、お金にもならない。しかし、それを大事にして育てていかなければいけないんです。